NEAT-衛星データを利用した富栄養化監視技術

NOWPAP CEARACの富栄養化評価に関する取り組みが、国連環境計画のホームページに掲載されました。以下に記事の参考訳を紹介いたします。

掲載記事URL: https://www.unenvironment.org/news-and-stories/story/neat-satellite-based-technique-keep-eye-growing-eutrophication-threat-oceans
05 MAY 2019

NEAT—a satellite-based technique to keep an eye on growing eutrophication threat to oceans
(NEAT-衛星データを利用した富栄養化監視技術)

参考訳

見渡す限り藻がカーペットのように広がり、死んだ魚が漂う。強烈な悪臭は肺を刺激し、目が痛む。富栄養化によって海域の生態系が破壊されると、実際にこのようなことが起こることがある。

農業・工業の活動や生活ゴミの中に含まれる過剰な栄養塩が海域に入り込み富栄養化が起こると、海洋生態系に深刻な弊害が引き起こされる。重要な生息域がダメージを受け、赤潮として知られる有害藻類が発生する。世界全体で人口の約半数が海岸から100キロメートル以内の地域に住んでいる。そして地球上の海域の41%が陸域に暮らす人間の活動に大きな影響を受けていると考えられる。

2008年には、富栄養化によってグリーンタイドと呼ばれる2,400平方キロメートルを超える巨大な藻類が黄海から東シナ海にかけて発生した。このとき、100万トンのグリーンタイドを除去するために1億ドル以上の経費がかかった。

Satellite imagery, a tool for early detection

早期警報ツールとしての衛星画像

国連環境計画地域海プログラムの1つである北西太平洋地域海行動計画「NOWPAP」が衛星画像を基にデッドゾーンと思われる海域(死の海域)を早期に検知する手法を開発し、これを利用して海を富栄養化の脅威から守ろうとしている。

2019年3月、ウラジオストックで開催された会議において日本、中国、韓国、ロシアの専門家が、海だけでなく人間の健康も脅かし、漁業や観光業にも打撃を与える富栄養化から北西太平洋地域を守る手段として、NOWPAP富栄養化評価ツール(NEAT: NOWPAP Eutrophication Assessment Tool)が有効であると認めた。

NOWPAPでは今後、オンライン検索システム大手のGoogleや日本の宇宙研究開発機構(JAXA)と協力し、クラウドコンピューティング技術を活用し、世界各地海域で起こりうる富栄養化の監視についてNEATの有用性を検証する。

渤海秦皇島市沿岸での有害藻類緩和対策、中国科学院海洋研究所Zaixing Wu博士提供

NOWPAPの特殊モニタリング・沿岸環境評価地域活動センター(CEARAC)でNEAT開発を主導してきた寺内元基氏によれば「膨大な衛星データを利用して富栄養化を評価するには、NEATのようなシンプルだが堅牢な手法が求められる」という。

NEATは衛星データから抽出したクロロフィルa濃度とトレンド(変化)を使い富栄養化の可能性がある海域を検知する。富栄養化状態にある海域では植物プランクトンの成長が著しく、海洋生態系へ有機物質が大量に供給されることから、富栄養化状態を判定するにはクロロフィルa濃度が信頼できる指標と考えられる。

寺内氏が主導した過去のNOWPAP活動の中で北西太平洋地域のクロロフィルa濃度を調べるために衛星モニタリングデータを利用してきたが、これを発展させてNEATを開発した。陸域から水が入り込み沿岸域の海水が濁ると衛星データでのクロロフィルa濃度の試算が困難になるという問題があるが、NEATではこの問題に対処した衛星データを利用している。

NOWPAPのCEARACは2008年から富栄養化に関する活動を続けており、これまでに北西太平洋地域の富栄養化評価手法を開発してきた。(2019年には)ウラジオストックで富栄養化評価に関する専門家会合を開催し、出席者がNEATの内容を検討した。

またCEARACは有害藻類ならびにその対策に関するポータルサイトをホームページ上に設け、北西太平洋沿岸域の地方自治体職員向けの富栄養化モニタリングガイドラインを開発する活動も行っている。

世界のリーダーが示した持続可能な開発目標(SDGs) -2030アジェンダのコミットメントの1つが、「2025年までに、陸上活動による海洋堆積物や富栄養化をはじめ、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に減少させる」ことである。NOWPAPプログラムオフィサーであるニング・リュウ氏は「NEATの利用が、SDGに対するNOWPAPメンバー国の進捗報告に役立つ」と語った。

お問い合わせ等はNOWPAP地域調整事務所ニング・リュウning.liu@un.org, tel: +82 51 720 300へお願いします。

Second CEARAC Expert Meeting on Eutrophication Assessment in the NOWPAP region

Second CEARAC Expert Meeting on Eutrophication Assessment in the NOWPAP Region was organized on March 22, 2019 in Vladivostok in Russia. The meeting reviewed progress for on-going CEARAC activities on eutrophication assessment and discussed how to update and improve information in the map of potential eutrophic zones in the NOWPAP region, available at https://map.nowpap3.go.jp/maps/view. The meeting participants also discussed possible contribution from this group to an indicator development of Index of Coastal Eutrophication listed as a sub-indicator of Sustainable Development Goal 14.1.1.

Group photo from the 2nd CEARAC Expert Meeting on Eutrophication Assessment in the NOWPAP region

CEARAC has been processing a regionally tuned remotely sensed chlorophyll-a concentration (satellite Chl-a) data in the Northwest Pacific region and regularly provide such data on the Marine Environment Watch System website. NOWPAP Eutrophication Assessment Tool (NEAT) was developed by CEARAC to identify potential eutrophic zones in the NOWPAP Region using level and trend of a time series of satellite Chl-a data. The NEAT enables visualization of potential eutrophic zones with single image condensing nearly two decades of time series satellite Chl-a data for assessment and management of marine eutrophication.

The meeting participants endorsed the effectiveness of the NEAT and encouraged CEARAC its further development with new ocean color satellite sensor data by inter calibration of sensors and cross validation with in situ chlorophyll-a  concentration data. More information about this meeting and materials can be found from the following page.

Meeting minutes of the Second CEARAC Expert Meeting on Eutrophication Assessment in the NOWPAP Region

Potential eutrophic zones in the NOWPAP region